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2011
須山口登山歩道(須山浅間神社 ー 水ヶ塚)
復活した古道『須山口登山歩道』を歩いてみた
須山口登山歩道について
須山口登山道は一般の人には殆ど知られていないとてもマイナーな登山道であるが、一番古くからある由緒ある富士登山道だという.愛鷹連峰の麓にある裾野市の須山浅間神社を起点に水ヶ塚を経て現在の宝永火口のある辺りを登って行く登山道だったが、300年前の宝永の大噴火で登山道が消失してしまったという.
江戸時代に宝永火口を避けるように新しいルートが開拓されたようだが、御殿場線の開業とともに新しく御殿場口ルートが須山口の二合八勺に接続されると、登山客が御殿場口へ流れてしまい殆ど廃道となってしまったようだ.
すっかり廃れてしまった須山口登山道ではあったが、地元の裾野市の有志が須山口登山道の復元に取り組み、1997年に須山口登山歩道として復活し今日に至っている.
現在の須山口登山道は水ヶ塚から上の部分に関しては御殿庭、宝永火口の左縁を経由して富士宮口新6合目で富士宮ルートに合流して頂上へ向かう須山口登山歩道と御殿場ルートの二合八勺(気象庁の白いコンクリートブロックの避難小屋のある場所)から分かれて幕岩、須山御胎内を経由し水ヶ塚へ戻る須山口下山歩道に分かれている.
残念ながらこのルートを麓の須山浅間神社から歩いて頂上を目指す人は滅多に居ないようで、水ヶ塚〔1合目)を起点に登る人がたまに居る程度だという.歴史のある由緒正しい富士山の登山道なので、お散歩がてら歩いて見ることにした.
須山浅間神社 → 忠ちゃん牧場 → 弁当場 → フジバラ平 → 水ヶ塚駐車場 [2011/8/15]
今日はお盆休みで朝から御殿場駅前のバス乗り場は須走口へ向かう大勢の登山客でごった返していた.3番乗り場から8:10AM発の須走口行きが超満員状態で出発するとバス乗り場は急に人気がなくなってしまった.8:25分発の十里木(じゅうりぎ)行きのバスに乗り、須山の手前にある津土井というバス停で降り、5分程で須山口登山歩道の起点の須山浅間神社に着いた.
須山浅間神社の境内は樹齢800年と言われる大きな杉のご神木が何本もそびえ立っていた.まだ新しい本殿の前には倒れてしまった樹齢800年のご神木の輪切りが飾ってあり、年輪の上に日本の歴史上の出来事の説明書きが添えられていた.
この日の天候は晴れていたがとても蒸し暑く、海から入ってくる湿った空気で富士山のまわりは常に雲が湧き上がっている状態だった.8月の富士山はほとんどこのような天気が続き、日中にすっきりと雲のない富士山を見ることはなかなか難しい.やはり梅雨明け後の一週間くらいが富士登山のベスト期間のようだ.
須山浅間神社から忠ちゃん牧場までは緩やかな登りの斜面できつくはないが、大量の汗で日焼け止めが流れ落ちてしまい殆ど効果がなかった.休憩がてら忠ちゃん牧場に寄り350円のソフトクリームを食べた.量は少な目だったがとても濃厚なソフトクリームでこれまでに食べたことのない味だった.
忠ちゃん牧場から先は急に登山歩道の標識が無くなり、コースが良く分からなかったのでとりあえず国道459号線を直進してサファリパークの入口の手前で右折する道へ進んでみたが、いくら先に進んでも全く須山口登山歩道の標識が見つからないので一旦忠ちゃん牧場の入口まで戻ることにした.
どうやら正しいコースは国道459号線方面ではなく牧場の入口から直ぐ右折して舗装道路を歩くようだ.この初歩的なコースミスで1km以上余分に歩いてしまい一気に気力を喪失してしまった.これ以降のんびりたらたら歩くことになった.
左手に富士山資料館を左手に見ながら舗装道路を進んで行くと、アスファルト舗装が途切れその直ぐ先に自衛隊の演習場の監視小屋があった.監視小屋の手前左側に富士山遊歩道という小綺麗な公園の入口があり、暫くこの細長い公園の中を進む.そのまま進んで行くと昔の有料道路の料金所跡らしき場所に出た.料金所跡から直ぐに道路を右側に逸れ、小さな川というよりは大きな用水路のような排水溝に沿って行くと弁当場と呼ばれる場所に出た.
弁当場には水汲み場があったが、水はちょろちょろとしか流れ出していなかった.裾野市の水道局が立てた看板では未消毒につき飲用禁止となっていたが、湧き水なので飲用にはまったく問題無いように思えた.帰りに再びここを通った際には、ザーザー降りの雨に関わらず3〜4台の車が水汲み待ちをしていたので、ここの水はかなり人気があるようだった.
弁当場から先は、国土地理院の地形図では一旦有料道路側へ戻るようなコース設定になっていたので、地図を信じてそのまま左にUターンするような形で進んで行ったが、登山道の入り口の標識が無く、そのまま有料道路へ出てしまった.有料道路のカーブの先まで行ってみたがそれらしき入り口が見つからないので、一旦弁当場まで戻ることにした.
弁当場に戻る途中に何となく登山道の入り口のような踏跡があったが、そこの標識は弁当場への方向を示しているだけで登山道入り口の標識ではなかった.弁当場まで戻ると橋を渡った目の前に立派な登山道の標識が立っていた.標識は向かって左方向ではなく右側へ行くように指示している.国土地理院の地形図に載っているコースしか頭になかったのできちんと標識を確認していなかった.
とりあえず国土地理院の地形図は無視して須山口登山歩道の標識に従って歩いて行くことにした.弁当場から水ヶ塚まではそれなりに傾斜もありそこそこの山歩きを楽しむことができるのだが、残念ながらこの日にこのコースで出会ったのは私の他には一人しか居なかった.途中にあった貯水池からは遊園地(ぐりんぱ)の観覧車が見えていた.ここで暫くランチタイム休憩を取り、ゴルフ場の脇を抜けて暫く行くと富士山スカイラインに合流した.
水ヶ塚駐車場に着いた頃にはすっかりガスがかかってしまい今にも雨が降り出しそうな怪しい雲行きだった.須山口登山道はこの先御殿庭を経由して宝永火口の縁を登って行き、富士宮口の6号目に合流し頂上へ向かうことになる.須山口の下山道は現在の御殿場口の下山コースをそのまま辿り、大砂走りの下にある旧二号八勺の気象庁避難小屋から右に逸れ、四辻(二合)、幕岩、御胎内を経由して水ヶ塚へ戻るコースを取る.
当初の予定では富士宮口の6合目まで行くことにしていたが、天候が思わしくなかったのでこれより先に進むのは諦めて帰ることにした.水ヶ塚駐車場からはシャトルバスで御殿場口へ行くことができたが、丁度良い時間にシャトルバスの便がなかったのでそのまま元来たコースを歩いて下山する事にした.
下山を始めて5分もしないうちにパラパラと雨が降り出してきた.最初は通り雨的なものだろうと思ってレインウェアを着用しないで歩いていたら、直ぐに雨足が強くなり本格的な土砂降りになってしまった.登っている時には見かけなかったが、この雨で活気づいたのか10cm以上もある大きなヒキガエルが登山道の至る所に出没していた.雨は富士サファリパークあたりまで下りて来る頃には止んだが、須山浅間神社まで戻ると数少ないバスの便に間に合いそうもなかったので、忠ちゃん牧場入り口から御殿場行きのバスで帰ることにした.
須山口登山道は宝永の大噴火まではとても歴史のある富士登山の道だったらしいが、復活した現在の須山口登山道の周りには歴史的な遺跡が乏しく、古道という感じがあまりしなかったのが少し残念だった.須山浅間神社から頂上まで一気に登るのでなければ猛暑の夏場はこのコースは避けた方が無難だろう.
今回は事前に国土地理院の1/25000地形図でコースの下調べをしていたが、実際のコースは地図に載っている登山道らしき軌跡とは大分違っていた.忠ちゃん牧場から富士山資料館までは標識が無くて苦労したが、それ以外は要所要所に須山口登山歩道の標識が設置されているので、標識を見逃さなければそれほど迷うことは無いだろう.
須山浅間神社を起点として頂上を目指す場合は途中の山小屋で一泊するのが標準的なパターンだろう.水ヶ塚を起点とした場合は日帰りで頂上まで往復可能な圏内だと思うが、水ヶ塚は公共交通機関の便が悪いのでマイカーかタクシーを使う必要があるだろう.
Zoom Level: Bearing(Heading): Pitch: Grid Interval:
須山口登山道を赤岩八号館付近より鳥瞰して見ると
忠ちゃん牧場 → 弁当場 → フジバラ平 → 水ヶ塚駐車場 [2011/9/24]
前回のトレイルで弁当場付近のコースが国土地理院のコースと違っていたので、再度この付近を歩いてみることにした.弁当場付近の入口が分かり難かったが、道自体はとても歩き易く整備されているのでフジバラ平へ向かう道としてはこちらのコースの方が最短距離で歩けるので良いだろう.
送電線の鉄塔の下まではとても安直なコースで道を間違えるような部分はなかったが、鉄塔の下でコース取りを間違えて送電線と併走する方向に行ってしまった.地図を見ながら歩いていれば等高線の向きで直ぐにミスコースに気付くのだが、送電線沿いに歩き易すそうな幅広のしっかりとした道があったので、確認もせずにそのまま道なりに行ってしまった.
結果的には前回歩いたコースに合流したのでちょっと回り道をしただけで済んだが、判断に迷った場合はやはりきちんと地図で確認するべきだった.以前の電子国土のWEBマップは1/25000地形図を基にしていたので送電線の情報が載っていたが、新しい電子国土はベースが電子国土基本図(地図情報)に切り替わってしまったので、送電線に関する情報が記載されなくなってしまった.山の中では送電線に関する情報は自分の現在地を知る重要な手がかりなので、新しい電子国土のWEBマップでも送電線に関する情報を復活させて貰いたいものだ.
新しい電子国土のWEBマップに対する国土地理院への批判が多かった?ためか、旧バージョンの地形図も暫定措置として閲覧できるようになっているので、山ではなるべく旧バージョンの地図を使うようにした方が無難だろう.
今回コースを間違えた地点を旧バージョンの地図で確認してみると、送電線の情報が有ればコースミスは未然に防げたかもしれない.新しい電子国土WEBマップではコースに沿って細い実線のラインが引かれていたので、何となく送電線に沿って歩くという先入観があったのかもしれない.
弁当場からフジバラ平への旧登山道コースは送電線巡視用のコースのようだが、比較的歩き易く最短コースなので時間を短縮したい場合には有効なコースだろう.
Zoom Level: Bearing(Heading): Pitch: Grid Interval:
送電線の鉄塔下から伸びている作業道らしき道
斜面方向へ進む(送電線沿いは間違い)
須山口登山歩道(水ヶ塚 ー 富士宮口六合目)『須山口登山歩道(水ヶ塚 ー 富士宮口六合目)』
須山口下山歩道 『須走グランドキャニオン&須山口下山歩道』
須山口登山道全体のコースマップ 『須山口登山歩道 GPSルートマップ』