10
04
2014
大雪山系 ニペソツ山
待望のニペソツ山へ
トムラウシ山への縦走計画を変更して高原沼巡りに切り替えたことにより、北海道遠征の日程に1日余裕が出来たので、昨年登ることができなかったニペソツ山を登ることにした.ニペソツ山は一般人には殆ど知られていない山だが、北海道の山登りをする人達の間ではかなり人気のある山だ.かの深田久弥さんもニペソツ山を最初の百名山の選定時に採り入れなかった事を悔やんでいたと言う.この素晴らしいニペソツ山が百名山に入らなかったことは結果的には良かったと思うが、もし百名山入りしていたら山は荒らされて悲惨な状況になっていただろう.
昨年ニペソツ山に登ることができなかったのは、ニペソツ山の登山口への公共交通機関が全く無く、糠平温泉から登山口までのタクシーの送迎料金が1万5,6千円も掛かると言われて泣く泣く断念したのだったが、今年は昨年の二の舞にならない様に公共交通機関を使ってどのようにニペソツ山を攻略するのか事前に戦略を立てていた.公共交通機関として利用できるのは1日に1往復しかない旭川〜帯広間を結ぶ高速バス『三国号』しか利用できない.早朝に着いて夕方に乗れれば日帰りという事も可能だが、登山口に一番近いバス停である十勝三股の時刻は、旭川→帯広行きが 12:45、帯広→旭川行きが 15:57 という何とも中途半端な時間だ.十勝三股から一六の沢コース登山口の杉沢出合までは2時間以上林道を歩かなければならない.前日からテントを張って、早朝から登り始めても12:45までに十勝三股まで戻って来ることはどう考えても無理なので、結局帰りは15:57の帯広→旭川行きに乗るしか選択肢がない.
結局、層雲峡温泉から前日のバスで登山口、あるいはコース途中のテント場でテントを張り、翌朝から登り始め、昼までに下山して15:57の帯広→旭川行きのバスでまた層雲峡温泉に戻ることにした.
25日のバスで層雲峡温泉から十勝三股へ向かうが、この日は天気予報の予想通り午後から台風16号くずれの低気圧の影響を受けて雨が降り出した.幸いなことに十勝三股のバス停には立派なバス待合小屋があったので、ここでレインウェアに着替えてから登山口へ向かった.十勝三股から一六の沢コース登山口まではかなり状態の良い砂利道の林道で、とても緩やかな登りの道が続いた.国道から登山口までは約8Kmで雨の中を2時間掛けてトコトコ歩いて行った.雨と汗でビショビショになりながら登山口に辿り着いたが、車が1台駐まっていただけで辺りは閑散としていた.雨で無ければ天狗のコルにあるテント場まで行くつもりだったが、雨の中そこまで行く気力がないので登山口の空き地にテントを張らせてもらうことにした.本当はこの場所でテントを張っては行けない様だが、今回は大目に見て貰う事にする.日が暮れてから軽自動車三台でやってきた7〜8人の若者のグループもテントを張っていたので、彼らも私と同じように翌朝から登り始めるのだろう.熊さんの居住地の真っ只中に独りではとても心許なかったが、これだけの人数が居れば熊もおいそれとは近づいて来ないだろう.テントに当たる雨音と沢の音を聞きながら早めに就寝する.
翌朝目が覚めると辺りはまだ真っ暗だったが、夜空に星が煌めいていた.どうやら雨は完全にあがり今日は晴天となりそうだ.朝食を済ませ出発の準備をしていると、早朝から登り始める登山者の車がやって来た.天気に恵まれそうなので平日の金曜日でもそれなりに登山者は居る様だ.
沢に架かる倒木の丸太を越えて登山を開始する.途中でGPSのログを取るのを忘れていたことに気付くが、登山口まで引き返してから再び登り返す気力はない.テントは登山口に置いてきたので今日はとても身軽だが、何となく足が重く調子が出ない.暫くは見通しの効かない樹林帯が続いたが、登山道は朝日を浴びてとても心地が良かった.小天狗の手前で麓の視界が開け、西クマネシリ岳(通称おっぱい山)などの東大雪の特徴的な山々が眺望できる様になった.
小天狗の岩場を抜けると天狗のコルと呼ばれる場所に出た.目の前には前天狗岳が聳えているが、ニペソツ山はまだ見ることができない.途中テントを張ることが可能な場所があったが、2〜3張り位しかテントを張ることができないような非常に狭いスペースだった.雪解けシーズンであればこの辺りで雪解け水を確保できそうだが、今のシーズンでは水は登山口で補給するしかないようだ.
右手に大雪の山々を眺めながら何とか前天狗岳の頂上まで来たが、途中で合流するはずの幌加温泉コースが見当たらなかった.どうやら合流点を通らない巻き道コースに入ってしまったようだ.前天狗の頂上まで来てようやくお目当てのニペソツ山が目の前に現れた.思わずニペソツ山の勇姿に見とれてしまった.北海道の山にしては珍しいとても先鋭的な山容が印象的だ.北海道の人達にとってはニペソツ山の山容は見慣れないとても珍しいものなのだろう.北海道の人達にとってニペソツ山は思い入れの深い山の様だ.
前天狗岳から一旦下ってニペソツ山頂へ向けて再び登り返す.目の前に聳えるニペソツの荒々しい東壁斜面を見るととても登れるような斜面には見えないが、頂上へは手前から西側斜面を巻きながら登って行くようだ.西側斜面の巻き道は思っていたよりも緩やかで、安全な道だったのでちょっと安心する.予定よりも少し遅くなったが待望のニペソツ山の頂上に立つことができた.頂上からの眺めは素晴らしく、ほぼ360度視界が開けている.天気も良く大雪山系の山々や十勝連峰、昨年登ったウペペサンケ山や糠平湖などを見通す事ができる.
時間が許す限りニペソツ山の眺望を独り占めしていたかったが、帰りのバスの時間も気になるので早めに下山する事にした.前天狗の登り返しがちょっときついが、帰りは周りの景色や草木を観察しながらのんびり下りる事ができた.下山中に昨夜からの若者グループも含めた20人ぐらいとすれ違っただろうか.登山口に戻ってきたときには車が10台くらいに増えていたので、今日はかなりの人達が入山しているようだ.
テントをたたみ、十勝三股まで林道をトコトコ歩いて行くが、往きの雨の中と違いとても清々しく心地良い林道歩きだった.十勝三股で帰りのバスを待つことにするが、まだ時間があるのでバス停の斜め向かいにある三股山荘というログハウスの喫茶店で時間を潰すことにした.三股山荘の裏手にはかつての国鉄士幌線の駅舎のプラットホームが残されていた.今は十勝三股には二軒しか民家が残っておらず、士幌線が走っていた当時を想像する事は難しい.
この日は午後2時頃に大雪湖周辺のトンネルないで起きた乗用車の自損事故による火災のために国道が一時閉鎖されてしまい、予定していたバスが十勝三股を迂回して運行されてしまったため、予約していた三国号に乗ることができず、結局タクシーで層雲峡まで戻る羽目になってしまった.予約している乗客が居るにもかかわらず、勝手に迂回運行を行い、乗客に対して何のフォローも行わずに放置して知らんぷりするバス会社(道北バス・拓殖バス)には呆れて物も言えない.こんな場所で放置されれば乗客がどのような事態に追い込まれるかは誰でも容易に想像が付くと思うが、このバス会社の運行責任者は一体何を考えて居るのだろうか.このバス会社に限らず、地方のバス会社は殆どの場合地域独占企業で大抵地元のドンが関わっている.行政も口出しすることができずに、国や自治体から多額の助成金を受け取りながら、殿様商売をしている困ったやくざ企業と言えるだろう.
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