『山と高原地図』アプリのGPSトラックログの精度を検証してみた

先日リリースされた『山と高原地図』アプリですが、一応GPSトラックロギング機能が付いているので、どの程度正確に記録できるのか試して見ることにした．ログ記録間隔としては、10,30,60,120,180,300,600秒を選択できるようになっているが、今回は一番短い10秒間隔で記録した．

比較のためATLAS ASG-1 (Holux GSPort245）で同時に記録してある．GPSの電波を受信しやすいようにザックの一番上のポケットに iPhoneとASG-1を入れている．精度比較のために歩いたコースは丹沢の雨山峠から寄沢沿いに下りて行くコースで、GPSにとっては苦手なコースと言えるだろう．

赤いラインがASG-1、緑のラインが『山と高原地図』アプリのGPSトラックであるが、やはり『山と高原地図』アプリのGPSトラックはかなり乱れてしまっている．これではGPSロガーとしては殆ど使い物にならないだろう．最新のiPhone4SではGPSだけではなくGLONASSにも対応しているのでもう少し精度は向上するとは思うが、GPS受信専用機と較べると圧倒的に不利であることは否めない．

『山と高原地図』アプリで記録された位置情報

iPhoneで取得できるGPSの位置情報データにはかなり癖があって、プログラムに工夫を凝らさないとまともなGPSデータが得られないが、GPSのトラックデータを覗いてみると、同じ値のデータが数点ずつ団子状になって記録されている部分が結構見られる．

このような異常なデータは記録間隔（今回は10秒）内にiPhoneのGPSデータが正常に取得できない場合に見られる現象で、無効（精度の低い）なデータであっても10秒間隔で無理矢理記録しているようだ．

そもそも iOSのCoreLocation Serviceフレームワークには一定時間間隔毎にGPS位置情報を取り出す方法がないので、タイマー割り込みで10秒ごとにデータを無理矢理吐き出しても、吐き出されたデータそのものが正常な値ではない（以前に取得できたデータをそのまま吐き出しているだけ）ので、このような方法ではまともなGPS位置情報データなど取得できるはずがない．

明らかにこのアプリのGPSデータ取得方法自体に問題があると言えそうだ．

記録されたログデータはGPXファイルとして取り出すことができるが、メールの添付ファイルとして外部に送信することしかできないので不便だ．”DropBox” などと連携するような手段が必要だろう．

『山と高原地図』アプリを購入するユーザ層としては、どちらかというと山歩き初心者が多いのではないかと思われるが、このような人達がこのアプリのGPS機能を使うのは諸刃の剣のような気がする．

地図やGPSに関するきちんとした知識を持っていれば『山と高原地図』アプリが示している現在地の情報が正しいかどうか判別が付くだろうが、初心者の場合『山と高原地図』アプリのGPS情報を過信しすぎて、かえって危険な状況に追い込まれるのではないかと危惧してしまう．

昭文社側としても『山と高原地図』アプリのGPS情報にはかなりの誤差が含まれていることをユーザに伝えておく必要があるだろう．

少なくとも日頃からGPSデータを活用している山屋さん達にとっては、GPSとしてのこのアプリの利用価値は低いだろう．

ASG-1の標高チャート

『山と高原地図』アプリの標高チャート

『山と高原地図』アプリのGPXファイルの内容